苗刀競技との関わり

はじめに

日中間の文化交流には悠久の歴史があり、その内容も実に奥深く、バイタリティーに富んでいます。
私たちが練習している「苗刀」も日本と中国の交流の中で生まれた刀剣術です。その起源は室町時代に創始された剣術である 「影流」だといわれ、紆余曲折を経て中国に伝わったのち、現在まで綿々と受け継がれてきました。
この項目では、類まれな歴史に彩られた「苗刀」の解説や参考論文の紹介、また苗刀を基に考案されたスポーツである 「苗刀競技」のルールや参考動画等を公開しています。

私たち東北大学中国武術部は、苗刀および苗刀競技の伝習と普及を通じて、日中間のさらなる友好を祈求します。

2011年10月10日

第18代部長佐藤 悠介

苗刀とは

苗刀とは、日本の古流剣術である「影流」を元に、中国で発展した刀剣術です。

影流は、室町時代に愛州移香斎久忠という人物が創始した剣術で、日本の兵法三大源流にも数えられています。 現在の日本では、残念ながら影流は失われてしまいましたが、過去にこの剣術は海を渡り、中国に伝わっています。 その背景には以下のような歴史がありました。

明代中期の中国沿岸部では、依然として日本の倭寇が猛威をふるっていました。 当時、南九州を根拠地としていた倭寇の一部には、愛州移香斎の嫡男である愛州小七郎が参加しており、 この人物を通じて影流は中国に伝わりました。 このとき伝わった技術は、「影流の目録」として「武備志」など中国の文献にも残されており、今もなお、その概略をうかがうことができます。

影流の伝播の後、この剣術は中国で大切に保存・継承されますが、その過程でいつしか「苗刀」と通称されるようになりました。 「苗」という漢字には「遠い血縁の子孫」という意味もあるため、日本から伝わった影流は「苗刀」と呼ばれるようになったと考えられています。

参考動画

  • ・苗刀競技会
  • ・苗刀VS剣道
  • ・苗刀乱取り
  • ・苗刀乱取り2

1.練習における苗刀の位置づけ

私たちは、主に通備翻子拳の練習を行う団体ですが、拳法をある程度修めれば苗刀の練習も並行して行います。 苗刀の練習に割く時間は決して多くはありませんが、拳法の練習によって培った身体能力と武術理論を応用させて苗刀の練習に取り組みます。
そのため、後述の苗刀競技による試合は、日頃の練習成果を試す絶好の機会でもあります。

2.苗刀競技について

苗刀競技は面、胴、小手、すね当てを着用し竹刀を用いて一対一で打突しあう運動競技種目であり、 稽古を続けることによって心身を鍛練し人間形成を目指す「武道・武術」です。
試合は、歴代日中剣道連盟が定めた試合・審判規則に基づき有効打突を競うものです。

苗刀競技試合規則

試合場

1.「擂台」(「らいだい」と読む)形式とする。
*擂台とは円形場の台を指す。
2.擂台の仕様は以下のとおりとする。
・円形
・直径9メートル
・高さ30センチメートル

試合形式と試合時間

1.ラウンド制とする。
2.2ラウンド行う。1ラウンドは2分とする。
3.ラウンド間の休憩は1分とする。
4. 試合途中にタイムがあった場合は試合時間の計測を一時中断する。
試合再開後に続きを計測する。
5.引き分けはなしとする。
2ラウンド内に勝ちが決定しないときは「サドンデス」方式で勝ちを決定する。
サドンデスの場合、休憩はなしとする。
注:サドンデスの状況では試合時間無制限であり1本を先取した方が勝ちとなる。

試合の開始と終了

1.試合の開始と終了は審判の指示に従う。
注:試合の運営はすべて審判に従う。
2.試合途中に、体調不良、負傷などの理由によりタイムをかけることができる。
注:タイムの時間は最大3分までとする。
タイムをかけた方は3分以内に試合を続行するかどうかを判断する。

道具

1. 防具は日本剣道連盟が定めた規定を満たすものとする。
【参照】「剣道試合審判細則規則 第3条」
注:防具には以下のものがある。
・すね当て(なぎなたの競技で使用するもの)
・胴
・面
・小手
2. 竹刀は日本剣道連盟が定めた以下の規定を満たすものとする。
【参照】「剣道試合審判細則規則 第2条」
3. 上着と下着についてはルールを設けない。
注:安全面を考慮して長袖と長ズボンを着ることを堆奨する。
4. 靴についてはルールを設けない。裸足も可能とする。
注:靴の形状から察して、当たったときに負傷する確率が高いことが明らかなときは、 その使用を禁止する。

勝敗の決定

1. 2ラウンド内に2本先取した方を勝ちとする。
2. 2ラウンド内に1本しかとれず、 そのまま試合時間を終了したときは1本を取った方を勝ちとする。
3.対手が戦意を喪失し棄権を申し出たときは本数にかかわらず勝ちとなる。
4.対手が戦意を喪失していなくても体調不良、負傷の状態が明らかなときは即、 審判が試合終了を宣言し、本数にかかわらず勝ちとなる。

1本の取り方

1.対手に「有効打突」を与えたと審判に認められたときに1本を取れる。
注:有効打突とは竹刀の打突部で打突部位を正確に打突したものを指す。
打突にある程度の威力があったと審判に認められなければならない。
竹刀の打突部とは手元の反対側の物打ちを中心とした刃部を指す。
打突部位とは、以下の部位を指す。
・面部(正面、右面、左面)
・頸部(正面、右側、左側)
・小手部(360度)
・胴部(正面、右側、左側)
・脛部(正面、右側、左側)
2.擂台 から対手を落とすと1本を取れる。
3.相打ちは相殺されるため1本を取れない。
4.禁止行為が2回為されたときに、禁止行為を被った方に1本を与える。

禁止行為

1.防具を装着していない部位への打突
2.殴打、(対手の身体や防具、竹刀などへの)掴み、抱え込み
注:体当たり、蹴り、足払いの使用は可能とする。
またそれらの打突部位は、竹刀による打突部位と同じくする。
ただし、使用目的は、1本を取るために対手の体制を崩すことである。
蹴りなど、その行為により対手に直接的な損害を与えることを目的としてはならない。
なお、体当たり、蹴り、足払いをかけられた方は、竹刀でそれらの攻撃を抑止することを可能とする。
抑止する場合、偶然に防具が装着されていない部位を打突することがあっても禁止行為とみなされない。
3.「ちょっと疲れたから」など自分中心的な理由による試合途中のタイム
4.鍔迫り合いなど互いに接近した状態でつばを吐きかけるなどの不適切な行為
5.審判に対する不服申し立て

その他の留意事項

1.竹刀を2本使用することは認めない。
*1本を片手で使用することは可能

以上